料理写真、虚構と現実

「3Dテレビが(ひっそりと)生産終了」というニュースをネットで見た。これまで(ひっそりと)3DテレビをソニーとLGがつくっていたそうで、不人気で需要がないことを理由に3Dテレビは生産終了となった。テレビの業界はいまや「4K・8K」だそうで、こちらもモノづくりが得意な「ニッポン」の誇る先進技術が消費者の需要との間で空回りしているんではないかという懸念はある。「プレミアムフライデー」同様に、きっと経済産業省が悪いんだろう。
 
 今回のブログのテーマは料理写真である。飲食店のホームページやフェイスブックにはその日のおすすめの料理の写真が載せられている。とくに高性能のカメラや撮影技術はなくとも、写真アプリなどで手軽に加工修正できるので、かなり美味しそうに料理を写したものを素人でもこしらえることができる。「こんな美味しそうな料理を出しているなんて、さぞ予約のとれない人気店なんだろう」と思わせるくらい立派な写真をのせている店は、ウェブ上には多々ある。
 ごくたまにではあるが、「ネットで見た写真が美味しそうだったので来ました」というお客様がいるが、そういうお客様に対してはどうしても警戒せずにいられない。というのも、写真によって喚起された期待を実際・実物が裏切ってしまってはお客様に満足していただけないから。噂を聞いてきたけど期待したほどではなかった、なんて思われるのは飲食店にとってはもっとも情けない事態だろう。反対に、期待以上に美味しかったですという言葉こそが最高の励みとなることは言うまでもない。古今東西、老若男女、今も昔も変わらないのは、写真よりお美しいですねとか、(50代のひとに)30代にしか見えませんよとか、(野獣のような)見た目よりずっと気さくで知的な方なんですねといった、期待と実際のギャップを(実際の方がいいと)他人から指摘されることほど嬉しいことは無いのではなかろうか。
 今年の初めの、お客様Aさんとの会話を思い出す。「マスターのところはおせちつくったの?」「いいえ、つくらないですし、買いもしませんでしたよ。好き嫌いの多いうちの子供たちは食べてくれないでしょうし。Aさんはどうしたんですか?」「それが息子夫婦も来るからふんぱつして、有名デパートのおせちを予約したんだよ。3万もするやつ。でもネットで見たら立派だったのに開けてみたら全然ショボくてさ、騙されたね。写真は3Dだったのに実物は2Dってどういうこと?腹立たしいね」
 今後ブログで当店の料理を写真で紹介する機会があると思いますが、写真を立派にするよりも実物を立派にできるよう力を注いでいきます。