経済産業省が創設した「おもてなし認証規格」というのをご存じだろうか?
我々飲食業を含めたサービス産業において「サービスの見える化」が叫ばれて久しいが、見えないサービスの品質を「お上」によるお墨付きをもらうことで「見える化」する取り組みに一役買おうというのがこの制度の目的のようだ。
実際にサービスを受けるまでその品質がわからない飲食店やホテル・旅館などを選ぶ際、ネットの口コミサイトを参考に(あるいは鵜呑みに)することが一般的だ。
あるいはホームページやフェイスブックなどで、お店の雰囲気や料理、店主の人柄などの魅力がお店側から「見える化」されたものを参考にすることもあるだろう。
(僕にはあまり縁がないが「ミシュラン」というのもある)
こうした口コミサイトなどには数々の指摘されている問題があるものの、経済産業省の定めた基準が、口コミを投稿したり、点数付けをする一般消費者の基準より信頼性において上回るものとは到底思えない。
サービス産業に従事する側としても、経営の際に向く方向は「お客様」の方であり、「お上」の方ではない。
また、ある基準に合わせることで生産性や安全性が向上する生産ラインにおける規格などと違って(飲食業にも衛生の基準は存在するし、基準を遵守することは義務である)、ある企業の提供するサービスは他の企業にない独自なものであるべきだし、その独自性だって環境や時代に合わせて変えていかなければならないので、社外の基準にサービスの質を合わせることはどれだけ意義のあることなのか。
それに、売り上げに直結するかどうかわからない「規格」なるものを意識する余裕など、サービス業に従事するきょうびの中小企業には無いような気がするのだが。
とは言いつつも無視できないのは、この「おもてなし認証規格」の柱のひとつには「インバウンド対応」、つまり外国人旅行者への「おもてなし大国」に相応しい対応というのも含まれていること。
そうなると2020年のオリンピックまでに「おもてなし認証規格」を普及させるために政府は莫大な予算を投下してくる可能性はある。
税制優遇・各種補助金等をエサにされると、多くの企業が規格認証の取得を目指すようになるだろう。
「おもてなし認証規格」が浸透するとはいわば、企業の経営プロセスに経済産業省の介入を許すようなもの。
「この「規格」の理念にしたがってサービスを提供しなさい。」
サービス産業に携わる企業向けの道徳教育、教育勅語といったところだろうか?
果たしてその時には規格を満たすお墨付きの優良企業ばかりが巷に溢れ、そうでない企業は淘汰され消えていくのか。
経済産業省の意に沿わなければ生き残れないということなのか。
ちょっと恐ろしい結論になってしまったので、最後にNちゃんから聞いたサラリーマン川柳:
接待は 裏があるから おもてなし
ついでにこんな川柳も:
おもてなし しなくていいから 安くして