ビールの再定義

4月から食料品の値上げが相次ぐというニュース。

値上げにうんざりといった街頭インタビューの映像とともに家計への影響などを分析するニュースを昨夜から今日の朝にかけて各放送局が流していたが、値上げする品目でまず挙げられていたのは我らが「ビール」で、物流費高騰を理由に10%ほどの値上げらしい。(ビールの次には納豆が挙げられていた)


今朝のNHKのニュースでは、ビールが酒税法上再定義されるというニュースが値上げの報道に続いて取り上げられていた。

この再定義というのは、フルーツやスパイス・ハーブなど従来ビールとして認められていなかった原料をある程度まで使用することが認められるといったもので(そういったビールは「ビール」と表記できず「発泡酒」とされていた)、ビールメーカーが工夫を凝らして個性的なビールを開発することが可能となり、供給側も消費者側もともに利があるといった建前があると思われる(建前というのは税収増をもくろむ国側の思惑が見え見えだからだが)。


最近スーパーの酒類売り場に行ったことはあるだろうか?

ビールや発泡酒、第3のビールが並べられたスペースに肉薄するくらいの、あるいは凌駕するまでのスペースを「缶チューハイ」が占めている。

「缶チューハイ」は確かにビールより安いが、ビールの代替とするならば発泡酒があるわけだから、缶チューハイは価格だけで選ばれているわけではなく、味わいの親しみやすさやバリエーションの豊富さが人気の理由なのだろう。


言い換えれば「入りやすさ」と「選択肢」。

「きっかけを与えること」と「飽きさせない工夫」と考えれば飲食店でも当てはまること。


昨今の日本酒ブームにも当てはめることは容易に出来る。

だがチューハイや今回再定義されたビールと違うのは、日本酒のバリエーションの豊富さは単に消費者に選択肢を与えるだけににとどまらないということ。


その先には造られた土地、造り手の個性、技術・歴史を感じさせる酒文化がある。

文化の広がりや造り手の思いを感じてもらえるよう、お酒を売るものとして心がけなければならないのは、お客様がお酒の「消費者」であると同時にお酒の「ファン」であってもらうこと。そうするために大事なのはうんちくを語るよりも造り手の思いを伝えることだと思うし、知ることよりも感じてもらうことであると思う。お客様の好きなものだけを提供するのではなく、好き嫌いを超えて「おもしろい」と感じてもらえること。


熟成によって、あるいは空気に触れることで花開く味わい、温度による変化・食事との組み合わせのおもしろさなど・・・純米酒の素晴らしさを感じてもらうために当店は燗酒をおすすめしてます。