身が締まり脂ののった魚に、寒さに耐えるために甘みをしっかりと蓄えた冬野菜。
こうした豊富な旬の食材には、「しぼりたて」のお酒を合わせるのもよし、一年じっくり寝かされた「寒おろし」の熱燗もよし。
旬の食材とお酒の旨みがもっとも良く溶け合い、高め合う最良の季節。
体が自然と日本酒を求める季節ではないでしょうか。
「しぼりたて」「初しぼり」が飲めるこの時期、全国の蔵は造りの真っ最中。
日本酒ブームとは言われるものの、それほど日本酒を飲む人が増えていない国内市場で、各蔵は生き残りをかけてしのぎを削る。
少しでも評判を落とすようなことがあれば、命取りになりかねない。
それだけにその年の造りの出来を占う「しぼりたて」の味わいには、緊張感さえ感じさせるものがある。
その「しぼりたてを」繊細に、ごくぬる燗で。
冷えていたときには味わえない酸由来の旨みが感じられる。
冷えていたときには抑えられていた渋みや苦みが垣間見え、それが奥行きをつくり出し、ともに合わせる食材への包容力をほのめかす。
心血を注いでつくられた日本酒には、心に滋養する芸術の側面があるものだ。